感傷マゾvol.03『架空のノスタルジー特集号』【紙版】
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通常、ノスタルジーは、「子供の頃の自分の生活」や「青春時代の淡い初恋のエピソード」など、過去の自分の人生を苗床に、現実への失望を養分にして、すくすくと育っていくものです。 しかし、青春時代に何も無かった人間はどうでしょうか?恋人もできず、部活で何かを達成したりもせず、ただただ授業が終わると帰宅の途につき、家に帰ってネットを見ていたら高校時代が過ぎ去っていた人間は、自分の青春を元にノスタルジーを育てようとしても、何も育てられないのでしょうか? おそらく、そうではないでしょう。たとえ、現実の人生に何も無かったとしても、アニメやラノベなどのフィクションを元に、浸れるほどのノスタルジーを生成することは可能なはずです。 そして、虚構に基づいたノスタルジーによって、「ノスタルジックな青春」のイメージを共有し、それらを創作に向ける逆の現象もまた可能なはずです。 複数のフィクションから架空のノスタルジーを生成し、架空のノスタルジーを元に創作を行う。これらのサイクルが何度も繰り返されることで現実が脱臭されていき、 「麦わら帽子に白ワンピースの少女」とか「浴衣姿の女の子と夏祭りに行く」とか 「夏休みに祖母の田舎に行ったら、久しぶりに会ういとこの女の子が可愛くなっていた」とか、 ノスタルジックな青春を描く際にありがちなアイテムが生まれるのだと思います。 青春時代に何も無かった人間にとって、これらのアイテムを組み合わせて架空の青春エピソードを作り上げることは、箱庭療法のようなものです。 実際には体験していないものを元に、ノスタルジーを作り上げ、浸ること。 それが「架空のノスタルジー」です。 今回は、架空のノスタルジーをテーマに、文筆家・木澤佐登志氏の評論をはじめ、小説やエッセイなどの合同誌を作成しました。