理屈よりも恋(コピー本再版)
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コピー本再版 ダンキバ/小説/A5/36P ストーカー気質なダンデさんと流され気味なキバナさんのSSをまとめました 常識通じないタイプ? 「キバナ! おはよう!」 「……おは、よ、」 揺さぶられて起きたキバナは、カーテンの隙間から僅かに差し込む光に朝だとぼんやりと思った。思考は完全に起きていなくて、頬に押し当てられるくちびるが気持ちいいなと感じるだけだった。 「ん、」 「起きてくれ」 寝直そうとしたキバナの肩を再びゆるく揺さぶり、ダンデはくすくすと笑う。耳に響く笑い声がくすぐったい。起きるには少し早いぐらいの時間で、ロトムもまだアラームを鳴らしていない。起こされたからといって怒るようなものでもないけれど、寝られるならまだ惰眠をむさぼっていたい。まどろむ心地がよすぎて、思考がとろけていく。 「ふふ、キバナ」 再び押し当てられたくちびるが額に触れた。まるで幼い頃にお休みのキスを母がしてくれたときのようだ。 「ん……、ん?」 ダンデの手がキバナの頬をくすぐっている中、キバナはようやく思考が覚醒してきた。どうしてこんなところにダンデがいるのかが理解ができない。一緒に住んでもいないし合い鍵だって渡していない。 「え、なんで、ダンデ」 「おはようキバナ、お寝坊だな」 「おはよう……いや違くて……しかもめっちゃ早ええし、朝五時じゃん」 時計に目をやって起き上がったキバナはチャンピオン服をばっちり着込んだダンデに頭を抱える。早くから起こされたことも家にいることもよく分からないしダンデはにこにこと笑っているだけだ。 「え、なにほんとになに? なにごと?」 「君の顔が見たくて早くから来てしまった」 「え、うそうそ常識通じないタイプ?」 何か悪いものでも食べたのかと思うほど話が通じない。話が通じないのはいつものことだったが直接行動に起こされたのは初めてだった。 「どこから入ったの、お前」 「ベランダから」 「えっ」 窓を見るとガラスが散らばっている。寝起きでこの状況は理解ができない。寝起きじゃなくても多分理解ができないだろう。 「え、なにこれ……割ったの?」 「いやちょっと勢いがよくて」 「うそおそれで怪我ひとつないの?」 状況からダンデの様子まで頭の中にクエスチョンマークしか浮かばない。頭を抱えたままダンデを見やれば悪気ひとつなさそうな顔をしている。どうしてこの状況でそんな無垢な顔ができるのかが分からない。 「なあキバナ、結婚しないか?」 「いや待って、この状況でそんなこと言わないで。もうこれ以上情報増やさないで」 もう今日は休んでしまいたい。窓ガラスの片づけもあれば、この男の始末も必要だ。キバナの言葉なんてひとつも届いていなさそうな様子で、ダンデはキバナの手を握り、ぴったりのサイズの指輪を左手の薬指に嵌めた。 「サイズいつ知った?」 「君が一か月前寝ている間に!」 一か月前から不法侵入されていたことも発覚して、キバナはひとまず、警察を呼ぼうと決めた。