神代エルフ王の耳飾り
- 800 JPY
蔵出し品です。 一年以上前に試作品として製作したものです。 時間の経過により、多少の曇りなどあるかもしれません。 不備、破損等についてはご相談に応じますのでお気軽にご連絡ください。 緑色のチェコガラスと金メッキパーツによるピアスです。 優しい緑色と金色の歯車を用いた作品です。 下記物語「かぜをつぐもの」と合わせて、お楽しみください。 なお第一話にして最終回はpixivにて掲載されています。 合わせてお楽しみください。 https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=10032374 質問等、お問い合わせお気軽にどうぞ。 発送はネコポスです。
謁見の間にて
森の女王は、重い口を開いた。 「『闇に咲く花』を森から追い出してください」 玉座は周囲の森がそのまま椅子の形を成したように、複雑に絡まり合い形成されていた。 エルフの女王は、旅の、それも人間の吟遊詩人に頭を下げた。銀色の糸のような髪が、さらりと流れ落ちた。 私は胸に抱えていたつば広の帽子を掴む手に、少しだけ力を込める。排他的で、多種族との交流を持たないエルフの、それも長が人間如きに頭を下げているのだ。だが、それでこの部屋から人払いをしたのも頷ける。 「私は一介の吟遊詩人。お力になれることなど、ないと存じます。王宮騎士のような輝きも、勇者のような神に愛された運命も持ち合わせては居ません」 「いえ、あなたこそが私の、私たちの勇者です。この森を救い、エルフを未来へ誘うのは、あなたです」 「理由を、よろしいでしょうか女王様」 「吟遊詩人様が、今私の前に居る。それではいけないのでしょうか」 私は言葉につまった。 女王は続ける。 「花は実をつけ、虫や、風に種を託します。そして生まれたのが、この森であり、私たちです。彼の時も、かくありたいのです」 「私が虫であると」 女王は手を口元によせ、くすりと微笑んだ。 「なんとも好奇心旺盛な虫様でありますこと。もう、気持ちは固まっているのですね」 どうして、私は物語への期待に笑っていたいたらしい。 私は一つ、自嘲の溜息をついた。 「気づけば新しいサーガを模索しておりました。まこと、節操のないもので申し訳ありません」 「ふふ、許しましょう。ですが、ひとつ約束を」 「なんでしょうか」 「『闇に咲く花』を払った後、詩人様はこの森に、居られなくなります。ですが、またこの地に訪れたときは、そのサーガをお聞かせ願えないでしょうか」 居られなくなる? 呪い、だろうか。だが、問題は無い。そもそも、私は一所にとどまる性分ではない。また、風が向けばくることもあるだろう。 「恐れ多い光栄です、女王様。拙い私の歌でよろしければ、そのときは私が旅を志す以前からの物語を、七昼夜かけて、お聞かせいたします」 「お手柔らかに。ではひとつ、餞別をお渡しします。先々代のエルフ王が創らせた、森のアミュレットです」 「先々代……」 驚愕という言葉に収まらない驚きが沸く。永遠に近い寿命を得るという、エルフ王の中の、その先々代といえば人にとってすれば、有史以前に等しい歴史的遺物。人の世では「神代エルフ」と呼ばれる、文字通り神に近い存在。そのアミュレットを巡って、国が動く。 「そんなに驚かないでください。もう古いもので、宿っていた精霊の力ももはや消耗してしまっています。御守りとして、お持ちください」 花の精霊が現れ、簡素な木箱に入った緑色の石の耳飾りを、私の前に持ってきた。夜露を纏う若葉の輝きを集めたような、そんな緑色をしていた。 「畏れ入ります。謹んで拝領いたします」 「それでは、詩人様。この森の未来をよろしくお願い致します」 私は頭を下げ、リュートとザックを背負い。謁見の間を後にする。 頭の中ではすでに、サーガの冒頭の歌が流れていた。 「かぜをつぐもの」より抜粋