あらすじ： 北海道の函館に住む長井昇一は、所謂アーリーリタイアを実現させて郊外の景勝地、大沼の湖畔にある屋敷で暮らしている。身の回りの世話をするためにメイド二人が住み込みで暮らしており、遠方で暮らす大学生である娘も時々、新幹線を使って帰省してくる。ある年、それに加えて海外からの留学生を招くことになり、彼女もやがてメイドに。昇一をとりまく女性たちはそれぞれの感情を持って仕えていくことになる。それを受け止めていく昇一の生き方は娘の涼香にとっては気になるところでもある。 みどころ：現舞台が都会、地方（田舎）と定期的に移り変わる高津本陣のメイド小説ですが、今回は久しぶりに北海道が舞台となっています。その独特の風土や文化をうまく取り込み、ストーリーに反映させていく。メイドでありながらあからさまにご主人様である昇一に好意を向ける彩菜の言動に気を揉まれつつ、その恋路の行く末を案じるのが本作の楽しみ方の一つといえるかもしれません。作中には意外にクラシカルなメイドについての描写も登場するので、それを見つけ出すのもよいかもしれません。 A6（文庫サイズ）292ページ