Anniversary
- ¥ 200
2022年11月のイベント「つなぐ絆が道標八8区」で頒布させて頂きましたコピー本です。 A5サイズ/二段組/本文21ページ/全年齢/¥200 ワンドロライ参加作品を加筆し再投稿した全4作品です。 (画像2が本の扉でして、全作品名となります) 申し訳ございませんが、多少の印刷のずれ(扉に線、本文が微妙に斜めにずれてしまっている箇所がある。 読む分には問題ございません)がございます。 それでも…と思って下さるようでしたら… ご理解頂きました上でお手元にお迎え頂けましたら幸いでございます。 よろしくお願い致します。
<温かい想い出と共に> 「今日はちょっと買い物に付き合ってくれ」 というメッセージが走のスマホに送られてきたのは 今頃きっとハイジさん昼休みなんだろうな、と走でもすぐ想像できるような 二時限目の終わりに近い時間帯だった。 久々に清瀬に逢える事が嬉しくて、予定より少し早めに 清瀬が住まうマンションのある最寄り駅に着いてしまった走。 師走を迎えたばかりの、 帰宅時間とクリスマス装飾が相まってなかなかに賑やかな駅前商店街をぼんやりと眺めて サンタを待つ子どものようにソワソワしながら清瀬の帰りを待っている。 待つ事十分程だっただろうか。 改札から出てきた人の波、その中の 少しだけ不自由そうに足を引きずりながら、 でもその細身の身体にとてもよく似合う黒のダッフルコートとスーツ姿の清瀬を即座に見つけて 思わず走は駆け寄ってしまいたくなる走。 だが、他のスーツ姿のサラリーマンや学生達にぶつかったりしたら迷惑だぞ冷静になれ俺、と 意識的にゆっくり、歩幅も小さくして数歩、清瀬の笑顔に向かって足を運ぶ。 「待たせたか、すまない」と清瀬はまず抑え目に一言。 そんな清瀬と向かい合った走は首をブンブンと横に振りながら あれ、ハイジさんまだ少し仕事モードから抜けてない?と思った。 <変わらない想い、輝き続ける想い> 今日は快晴。 透き通るような天高い真冬の青空の下、もうすぐ君が俺の目の前の駆け抜ける頃だ。 東京に来て初めて過ごす冬に一番驚いた事は、 とにかくよく晴れるなという事だった。 確かにテレビ画面で観戦する際も箱根はかなりの割合で晴れだったし、 大雪が積もる中ハチマキをした選手が走っていた画像というのは白黒だったりして、 案外昔の出来事だったりする。 そうなると、たった一度だけ走ったあの日にあの天候だった俺は雨男だったのか。 いやいや、予選会だって雨だったし 箱根六区の悪路を考えれば雨男はユキだったとも考えられる。 そんな事を思い巡らせながらスマホ画面を眺めている清瀬だが 清瀬の周りのひしめくように立っている大観衆も皆、 片手にスマホ、片手に配られた新聞社のロゴの入った旗を手にしたりしながら 新しいヒーローの誕生を、 そして何より寛政大学初優勝の瞬間を待ちわびながら過ごしている。 スマホの画面に映し出される 十人の汗と想いが滲み込んだ黒い襷を肩にかけ疾走する走は、 程よい緩みと集中が表情やフォームから見て取れる。 うん、状態はよさそうだ。 実況者の少々熱が籠りすぎた表現がスマホから聞こえてくるが、それもあながち間違ってないとも思える。