SAMPLE

「イベリス」 ひさしぶりに作曲に行き詰まり、息抜きに街に繰り出す。 春眠暁を覚えずとはよく言ったもので、ぽかぽかの太陽が程よく眠気を誘う。 歩き出してから既に1時間を超えはじめ、不意に大きなあくびが口から洩れる。 ―――少し休憩にしよう。 俺は住宅街にこじんまりとした可愛げな公園に引き寄せられるように足を滑り込ませる。 スポットライトのように日向に置かれたベンチに腰を下ろす。 ズンっと足に重みを感じる。 疲れていたんだなと自分自身の体に愛想笑いを浮かべる。 ほおっと口からため息がこぼれる。 少し遠くの大きな木に目を移しぼうっと眺める。 「Growth」 自分自身の所属しているチーム。 俺の居場所。 俺の歌を奏でてくれる愛おしい友人。 そして・・・ 大きく息を吸って、春の空気を肺いっぱいに吸い込む。 少し冷えて、それでいて桜のような甘やかさを感じる。 甘やか・・・ お兄さんは、今、高校生に甘やかされています。 ーーーー イラスト投稿にて実際のページでのサンプルが上がっておりますので一緒にご確認ください。 花言葉×Growthの短編集第一弾です。 衛藤昂輝の誕生花フクシアを中心に5月頃の誕生花を元に詰め込みました。 「イベリス」：曲作りに行き詰まり散歩に出かけた公園で衛が見た懐かしい夢とは。 「ジニア」：撮影帰りに寮に着くとそこに昂輝の姿はなく。 「フクシア」：誕生会終わりに、昂輝は自分の誕生花を見つめながら、物思いにふける。 「フジ」：神妙な面持ちで相談を持ち掛ける昂輝と一抹の不安を感じつつ当日を迎える衛。