少女のしていた耳飾り
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「かぜをつぐもの」内で登場する耳飾りです。 (下段短編を参照。かぜをつぐもの第一話https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=10032374) 過去に試作した蔵出し品です。 保管には万全を期していなかったため、金メッキに多少の曇りがあるかもしれません。 状態は写真の通りです。 メッキアレルギーの方はご注意ください。 チェコガラスを使用しています。 時の中に生きる森の民である金の歯車と、命の息吹を象徴する緑色の雫石を用いています。 ネコポスにて発送します。 質問等お問い合わせあればなんでも受け付けます。
依頼は終わらない
月明かりを束ねた矢は、軌跡を残し『花咲く闇』を貫いた。 森を包む夜の帳の中で、それは霧散し静寂が降り注いだ。 アルテミスの神殿で、矢の作り方を聞いておいて本当に良かったと思う。盗み聞きではあったけど。 「……」 声が聞こえた気がした。 私は慌てて足場にしていた巨木から飛び降り、『花咲く闇』がいた場所に走った。 「なんてことだ」 思わず声が漏れた。エルフの少女がいた。まだ幼い瞼の丸みには、月明かりの残滓が煌めいている。女王の言葉が蘇った。 「『花咲く闇』を倒した後、この森にはいられなくなります」 最初は体に残った瘴気が森に障るからと、早々に立ち去れとういうことと思っていたが、ことはもっと複雑だった。それに、森から追い払って欲しい、とも言っていた。一連の森の異常も『花咲く闇』の活動も、この少女が原因だった。しかも、私の推測が正しければ、この少女の正体は……。 ざわり。 悪寒が蘇る。私に取り憑いた闇が、彼女の闇と共鳴を始めた。選んでいる暇はない。この森でしか存在できない『花咲く闇』を抱え、私『達』は早々にここを去らなくてはいけない。外に出れば、残滓もいつか消え彼女も『母親』の元に戻れるだろう。 しかし、やはり私も詰めが甘いというか、わきが甘いというか、依頼に子守が含まれるなんて想像の埒外だ。まあ、そんなんだから行商の一家と盗賊の一家の区別がつかなくて、身ぐるみはがされたりするんだ。これからはもう少し、疑り深く行こう。うん、決めた。 ぞぞぞ、と活動を始めた闇が蛇のように首筋を這った。 「ええい、お嬢さん! 起きてください! 私は君を抱えて森を走るなんてしたくないんですよ!」 遠慮無く頬を叩くが、起きる気配はない。もう、どうにでもなれだ。 「よおいしょお!」 へとへとの体で彼女を抱え、私は月明かりがまばらに指すエルフの森を駆けた。 彼女の耳には、エルフ王の耳飾りに似た緑色の耳飾りが揺れていた。