あなた色にそまる涙を
- ¥ 500
のぞえりイメージピアス (金Ver) フックピアスです。 メッキ製品ですのでアレルギーの方はご注意ください。 スワロフスキーガラスを使用しています。 手作りですので、写真と多少の差異があるかもしれません。 ご了承ください。 なお、近日樹脂フックピアスの銀Verも登場予定です。 希と絵里の色が混ざり合い、互いに触れあう心をイメージしました。 設定としての物語は下記にあります。 大学生になり、未だ進展のない二人が一緒に遊園地にいったとき、なにかが動き出します。 是非ご一読ください。 ネコポスにて発送します。 質問等お問い合わせあれば、お気軽にどうぞ。
あなた色にそまる涙を
大学の夏休み、やっと誘えたデート。 観覧車の中で勇気を振り絞って言った。 最後はもう、消え入りそうな声だったと思う。 「エリちのこと好きなん……よ」 「ええ、私も希のこと大好きよ」 優しい、いつもの、なんでもない笑顔。 失恋が決まった瞬間だった。 エリちは、ウチを友達としかみてくれてへんかった。 それからたわいもない話を続けるエリち。観覧者を降りるまで、ううん、その後も地獄のような時間だった。 玄関を閉じると、すべてが壊れた。壊した。 「あああああああああ!」 デートのためにと、バイトして買った可愛いバッグを床に叩きつけた。 崩れないよう細心の注意を払って結った髪をほどき、ぐしゃぐしゃにした。 レースが気に入っていたカーディガンを乱暴に脱ぎ捨て、拳を振り下ろした。 紫と蒼のピアスを外し、どこかに投げ捨てた。 姿見に、恐ろしい風貌の自分が映る。 こんなに醜い女がいるだろうかというくらい、けだもののような姿だった。 実際醜い。浅ましい。愚か。欲深い。そしてばかだ。 あんな綺麗な人の横にいられると、その一部になれると本気で思っていた。ずっとずっと思い描いていた未来予想図が、ばかな女のひとりよがりだと妄想図だと、つきつけられた。 ウチのものだと自慢げに街を歩く夢。手を繋いで一緒に赤くなるなんて夢。レストランで食べさせあう夢。唇を重ねる夢。彼女に全身を求めてもらう夢。 あさましい、あさましい、あさましい、あさましい……きたない。 エリちに可愛いと言われたくて、いっしょになりたくて開けたピアス穴がずきずきと痛んだ。この穴はいつかは埋まるかもしれない。でもそれまでも、それが過ぎても、この胸の痛みは終わらない。 キャミソール越しに胸を掻き毟り、嘔吐するように泣いた。痛くて、苦しくて、怖くて、悲しくて、恐ろしくて、めちゃくちゃで、そして気持ち悪かった。 胸を引き裂いて、全部洗い流したかった。 失恋の痛みも、あれだけ愛しいと思えた好きという感情も。もう濁ってしまって、汚れのようにしか思えなくなっていた。 ふいに、呼び鈴と携帯端末が同時に鳴った。待受けにはエリちとある。 [返したいものがある] 痛む胸をおして待っててと返事をし、乱暴に顔を洗った。一番見たくない顔を見なきゃいけないのに、一番みたくない顔になっている。なんとなく、どうでもいいやって思った。 「夜中にごめんなさい。希にすぐ返さなきゃいけないって思ったから、明日まで待てなくて」 「ええやん。お風呂入るところやったから早くしてな」 いつも通りを装いたいのに、やはり辛辣になってしまう。 だって、辛いもん。 「で、なんやん?」 遊園地のパンフレットやろか。 なんかあったかな。 「あの、私逃げたの」 「なんの話?」 「希が必死にくれたのに、私怖かったし、もう少しあとでもいいかなとか、バカなこと考えちゃっていたの。今がいいなって、甘えていたの」 「なんの話やって。早く、反すものあるんやろ?」 「そ、そうだったわね」 エリちは要領を得なかった。あーとかうーみたいなことばかり。前髪いじったり、鞄持ちなおしたり、視線があっちへこっちへ。 ウチは早く失恋の続きしたいんや、反すもん反して、さっさぁ帰りや。 「はよ」 「わ、わかったわ! あ、あのね……わ、私ね」 「なん?」 「困ったわ。こんなにも勇気がいるのね。ああ、本当にごめんなさい希」 「はよって。眠いんよ。明日の講義も早いし」 「う、うん……えっと、あの……こ、こんなとき『その講義は欠席ね』みたいにかっこいいセリフ言えたらよかったんだけど、えへへ」 「ちょと、ウチかて怒るで。ほんま、はよ寝たいんよ」 「あ、あの! 希が好き!」 「………………………………………………………………………はい?」 「観覧車で言ってくれたでしょ。私、本当はわかってた。今日も希がすごく可愛くしてくれてたの。私好みにして、くれて……た? のかな、とか浮かれてたの。私の希って嬉しくて舞い上がってて。それで、なんかいい気になって。いや、違うわね。土壇場で怖くなったの。関係が変わるのが。私の希じゃなくなったらって。だったら今のまま、希が私を好きだろうって距離でいたらって。でも、そんなのいけないなって、せっかく希が言ってくれたのに、逃げちゃいけないねって……あの……あれ、希……さん?」 「遅いわばかあ!」 その後は、嬉しすぎてよく覚えていない。 ただ、あとでピアスを褒めてくれたことと、その夜エリちが触れてくれたところと、翌日二人して講義を欠席したことは全部覚えてる。