A4/P24/￥700/クル監 【本文より】 　……性別。 　冷静でない思考が『それ』に至る頃には、身体はとうにオンボロ寮の前。 「それに……子分の部屋から、ヘンなにおいがするんだゾ……」 　グズグズと鼻を鳴らすグリムに苛立ったわけではない。 　…………が。 「クソ…………ッ！」 　片方の眉を跳ね上げ、クルーウェルはチッと短く舌打ちをする。 「この匂い……！　発情期か……！」 「はつじょうき……？」 「グリム」 「な、なんなんだゾ。クルーウェル、オマエ、表情が怖いんだゾ……！」 「……厄介なことになった」 　なにせ、クルーウェルの第二性はアルファである。 　革手袋をマスク代わりにしてみたところで、 　……若いオメガの放つフェロモンは、強烈だ。 　それも、抑制剤の影響を受けていない、『生』のフェロモンだ。 「俺が妙なことをしたら、殴ってでも止めろよ」 「ふなっ！？」 　頭蓋を直接殴られてもこうはならないだろう、というほど頭の奥が痺れて、ぐらぐらと煮え立つ。 「グリム。お前だけが頼りだ」 【一部抜粋】