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サイズ:A5 形 体:コピー 頁 数:20頁(表紙込) 発行日:2025.08.17 箱館で春を迎えた土方さんの話。箱館で春、つまりそういう時期の話です。 伊庭さん、星さんが出てきますが、全体的にはそんなに暗めではない、と 思います。
水天一碧
ちらりほらりと雪が舞ってはいるが、吹雪く事は減ってきた弥生の終わり。山の上に立ち、 眼下に箱館の街を見下ろす。白く広がる大地に点在する家々と、うっそりと建つ、見慣れた鋭角のひとかけら。 「…」 初めて見た時は随分と変わった格好の砦だなと思ったが、入ってみればなるほど、合理的に出来ているもんだと感心した。それぞれの稜堡から狙えば死角なく守りを固められる、西洋式城郭なのだという。自分達があっさり攻略出来たのはひとえに戦さ慣れしていない新政府側との経験値の差で、さして誉められる言われもないと思っている。まあ、面倒臭いので、適当にあしらってはいるが。 榎本さんの理想は絵に描いた餅だと分かっていた。新政府から蝦夷地の下賜を受け、徳川家臣団を入植させて開拓と北方警備を担うなんて、認められる訳がない。相手は関ケ原の戦で負けて、外様大名となって幕府の目が届かない事を幸いに、力やら財力やらを貯めに貯め、 錦の御旗とやら掲げて鳴り物入りで戻ってきた連中だ。こちらが同じ事をしないと思える程、おめでたくねぇに決まっている。 それでも俺はこうしてここに立っている。俺自身が決めた、俺の命の使いどころを定めるにゃ、一番都合が良いからだ。日野のバラガキ、試衛館の懐番。京の鬼の副長に幕軍の軍神。周りからの呼び名はどんどん変わっちゃいるが、まあ、俺は俺だ。土方歳三、親から貰った名も時には変わるがな。
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