合縁奇縁
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サイズ:A5 形 体:コピー 頁 数:24頁(表紙込) 発行日:2024.3.17 異去攻略に乗り出す本丸サイドと、現世にて強制休暇中のくりんばサイドのお話。以前出した『夜雨』『吹花』『春霜』『月之』と同じ本丸の話ですが、特段繋がってはおりませんので、単独で読めます。 うちの切国は大倶利伽羅より料理がうまい、ような。 注意! 【尭風舜雨】に再録済です。
合縁奇縁
極めた今も本質は変わらず、褒められたり感謝されたりする度に困ったように眉を寄せてしまう切国の、その表情が愛らしいと言う者も多い。戦場と日常の差異の大きさに嵌まる者が後を絶たないのだ。 最もそれはいずれも憧れや淡い、自覚なしの恋心の様なもので、それ以上のものにはならない。誰だって馬に蹴られたくはないものだ。ましてや龍の掌中の珠ともなれば、蹴られるどころではすまないのは容易に想像が付くものだし。 ぎぃう。先程よりも少し大きく蝶番が鳴り、また客が入ってくる。浅黒い肌、瞳は金。髪は茶だが、毛先は熾火の様に紅い。 「…」 ちらりと視線を向けた金髪が僅かに頷くのと、後から来た男がすいと近寄るのを見て、知り合いかと店主は思う。色味は正反対だが、随分と身目麗しい二人組だという感想が浮かぶが、 それもまたすぐに頭から抜け落ちた。そんなことより、読んでいた本の続きが気になる。 切国がまだ棚を見たいようだと見て取って、大倶利伽羅は店の反対側に回る。切国と現世に来るときに古書街によることは多い。二人とも、本丸の中でも三本の指に入る本読みだ。ちなみに最後の一本は意外にも大包平だったりする。 切国と大倶利伽羅の読むジャンルは必ずしも重なっていないので、こうして古書街に来る時は時間を決めて待ち合わせすることが多い。共に在るからと言って、同じものに惹かれるとは限らないし、互いの好みは尊重すべきだと思っている。