短編小説集 手紙
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文庫サイズ130ページ カバー・帯・栞付き 『短編小説集 手紙』全四編 『消失の藁』 正月。帰省した実家にてふたりきり酒を飲む妹と兄。 久しぶりにも関わらず、思い出話に花を咲かすことはない。 互いに触れない過去がある。 しかし触れないでいることがむしろ、その形を浮き彫りにする。 優しさも、気遣いも、あなたをそれと認める限り、妹は頑なに醒めていく。 『まちぼうけ』 一日帰ってこないくらいのものと思っていた。 「馬鹿じゃないの?」 「実は私も、そんな気がしていたんですよね」 同居人を失った引きこもり。 他人との唯一の関わりは、ベランダで隣人と話す時間だけ。 「てか、嫌んなってきた、嫌んなってきたぞ、説教臭いぞ」 稔理はこのまま待ちぼうけるのか。それとも。 『怪談・迷い道』 道を覚える才のない静夫は、しかし帰れるものと高を括り、 ナビアプリを使わずに運転していたばっかりに、 右折するべき交差点を見逃して、あんな目に遭ってしまった。 右折の右折で本来行くべき道へと戻れるはずで、 しかし右折の次にまたすぐに右折ができるとは限らない。 進めば進むほど道幅は狭くなり、引き返そうにも引き返せない。 それはまるで、静夫の人生の様に。 『たかが手紙に屈してなるか』 不幸の手紙を真に受けて、男は不安で眠れない。 こうしていたら眠れるかもと、寝床で文章を書いてみる。 延々とフリック入力を続けるうちに、男は閃きを得る。 手紙の不幸から逃れるためには、不幸の手紙を読み解かねばならない。 拡散なんてしたくない。そもそも個人の住所を知る人間などいない。 手掛かりは本文にある。手紙を何度も読み返す。 己の思考を書き留めて、辿った思考も読み返し、 不幸の手紙の呪いに真っ向から対峙して、 ひたすらフリック入力で戦いを挑んだ男の手記。