[34]春咲く つつじ
Physical (worldwide shipping)
- 450 JPY
Physical (ship to Japan)
- 450 JPY
32P/B6/10ポイント/コピー本 【トロワ×カトル】 ▼作品価格に 送料なども含まれていますv トロワの考えていることがわからなくて、すれ違い、もどかしくもせつない想いで胸がいっぱいになるカトル様。 なんだか、いつもの、我がサークルの匂いがきつくするお話です(笑) トロワの考えていることがわかりにくいのは、無口無表情なだけではないのかもしれません。 とりあえず、胸を痛めたり逆に喜びでも、なんにせよ涙をこぼすカトルというのが大好物なので、やめられそうにありません;; 泣いているカトルを見るのがお好きなかた向けですね(笑) 同じくこういうの好きだ!ってかたと出会えれば、この小説も報われるかと思います(笑) ちなみに、本編後、数年経過しているくらいのお話かなぁと。 マンネリを感じるかたもいるかとは思いますが、単純な小説なので、片手間に読んでいただけるだけで嬉しいです。 戦後のお話になりますv 興味があるかたと出会えると幸せだなぁと思いつつ、本のご紹介でした!(笑) 一途なカトル様は本当に愛おしい。トロワも心からそう思っているでしょうねv(笑)
■■■ちょっと本文■■■
言葉数が多いわけではないが、メールの返信は、短くとも温かさが滲んで いるような、穏やかなものだった。 ただ、トロワの寡黙さを知らない、カトル以外の者が読めば淡々としたも のに感じるだろう。だが、優しく穏やかだと感じるそれは、カトルがトロワ の性格を、よく知っているせいなのだろう。普通に読めば、とても、その文 章から温かさなど感じられないが。今では、文章を読んでいるだけで、どん な様子で言葉をかけてくれるのかまで、カトルにはわかるようになってきて いた。そういう字面に触れていると、とても好意的で優しくあたたかで。 しかし、いつも「逢いたいね」というようなことを書くと、それについて の言葉への反応はなく、本当は自分のことがトロワは、嫌いなのかもしれな いと、カトルは季節が移ろうにつれ思うようになっていた。それがとてもカ トルを不安へとつき落とす。もし、嫌いなのなら、その事実を隠したままで いいから、返信をすることもやめてくれればいいのに。と、思うものの、カトルが自分からトロワと距離をおく勇気はないと自覚していた。 誕生日の花のメインはいつも、春の花である、つつじだった。 言葉数の少ないトロワは、その花の持つ意味でなにかカトルに伝えようと していたのかもしれないと、カトルはふと思った。 花言葉というものを思い出し、おそるおそるカトルは書庫にある花言葉の 本を探した。 「えーっと。『つつじ』。『つつじ』って、どんな花言葉なんだろう……。あ、 あった!」 見ると、『愛がたもてる恋人の守り花』となっていた。 「う、うわ!……も、もしかして、嫌われて、ない?……」 カトルは思わず勢いよく椅子から立ち上がってしまった。 「こ、こんな意味が添えられていたの?」プチパニックを起こしながら、今の文面を見ると、どう読んでも、そうい う、ロマンチックな言葉だった。 「あれ、まだ続きがあった」 ドキドキしながら、思い切って目を通してみると、そこには……。 テンパリながらも、その意味を知って今度は、崩れ落ちていた。 「ひどいジュークに出くわしたみたい」 先程の言葉で、なぜかドキドキと大きくなった心音が、今度は違う意味で 震え、何とももどかしい。 胸の中を表すように、すす汚れた重い布地が心に覆いかぶさってきた。 「『ただし、くされ縁の場合はよくない』……」 ふっと身体の力が抜けた。 「……そ、そうだよね。僕ってバカみたい『くされ縁』だって……。僕に伝えたかったのかな。……もっと僕に距離を置けっていう気持ちだったんだね、 きっと」 トロワは優しいから遠まわしに感づかせようとしていたのかと、カトルは 考えたが、本当に距離がおきたければカトルからの連絡を一切放置してフェ イドアウトしていけばいいだけだ。トロワからはそういう態度はみられなか ったはずだが、花言葉のダメージがきいていてカトルの判断力をそぎ落して いた。 「……自分の鈍さが憎い」 一人で勘違いをして恥ずかしい。『恋人』という文字を見た時の理由のわか らないものとはまた違う、頬が羞恥で赤みを帯びる。 「いつも返事を待って、そわそわしていた、自分がバカみたい。と、いうか、 バカだよ」 そもそも。トロワは『花言葉』なんて、考えてくれるようなタイプだったのだろうか?きっと、店員さんのおススメでつつじが使われていただけだ ったのだろうと、カトルは思った。いや、そう思うことで自身の動揺を押し 込もうとした。 一人で一喜一憂している自分の姿が情けなくて、椅子に腰かけ直すと、カ トルは自虐するように机につっぷした。 そうなのだったら、もう、メールは自分からはしないほうがいいのだろう かと、より強く、いつもよりもさらに思うようになっていた。メールをする ことに罪悪感と虚無感、ある種の恐れを持っているなんて……。 トロワは優しいので、きっちりと返事はくれるのかもしれない。独りよが りのように無意識でなっていたのかもと、強く思うようになった。 それでも、トロワの優しい返信はとぎれることはなかったので、思い切っ て自分からトロワには連絡をしないではいられないのだ。回数を減らしてい ったとしても、微かな希望を抱いてしまい、完全に断ち切ることはできないだろう。