【24】Rest
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B6/9ポイント/24p 小説 デュオ×カトル (価格は送料など込みのものになっております) 本編設定。 愛の逃避行、二人でカトルの別荘に潜伏していたときの話になります。 戦中ではございますが、ほっと一息つきたい、可愛い愛溢れるカプ本が読みたいかた向けだと思います。 偶数が好きなかたに是非読んでいただきたいですv 少しでも、好意的な微笑や、キュンとしてくださるシーンがあるといいなぁと思いつつ。 書いている最中まで幸せかんじる偶数カプなのでしたvv 最高に可愛くて幸せで、ストレートでいいですね! ✱一部、本文掲載しますねv
Rest
二階のバルコニーで読書をしていると、 「カトル! カートルー!」 下の方から名前を呼ぶ声がした。 「デュオ? どうしたんですかぁ?」 「ちょっと、こっちに来いよ!」 「えっ?」 「こっち。ここ!」 「あっ、はい。じゃあ、すぐ下に行きます」 カトルが身を乗り出して返事をし、反転すると。 「待てよ、カトルー」 「へ?」 「そっから、飛び降りろ!」 「えっ?」 そんなことをニッコリと明るい笑顔で言うのかと、カトルは驚いた。 「芝生!」 ぱふぱふと長い脚を踏み鳴らす。 「オレ!」 ニシッと笑って親指で自分を指す。 「なんか、ヤバイ?」 茶褐色の長い三つ編みを揺らして首を傾げ、カトルを真っすぐに笑顔で見た。自信満々のデュオの様子に、なんだかカトルも頼もしくなってしまう。 この閉塞感のある潜伏期間を過ごしていられるのも、デュオのこういう、明るさを忘れない絶対の強さが、ときに自分の脆くなりそうな心を、救ってくれているからだとカトルは思っていた。そんな彼が口にするなら、信じたい。いや、信じられる。 バルコニーの塀に足を掛け一瞬ためらうものの、 「カトル、来いっ!」 カトルは両腕を大きく開いたデュオだけを見つめ飛び降りた。ボフンッという響き。デュオは軽々という様子で。どこからこんな力が出せるのだろうカトルを抱き止めた。 抱きしめ合ったままカトルはギュッと瞑ってしまった大きな瞳を開けると、びっくりした表情をした後、至近距離から二人は改めて目線を合わせ、ひとしきり笑いあった。 「すっごいです、デュオー! はぁ~、でも、不安でしたぁ」 「え? なにがァ? オレが受け止めてやれないとでも」 「違います!」 「そうだろ。だからこそ呼んだんじゃねぇか。危ないなんて爪の先ほどでも思ってたら、呼ぶわけねえだろ。大事なカトルのことなんだからな」 「へっ」 見る見る顔が赤くなっていく感覚があった。鏡がないから確認はできないのだが、自分の顔のほてりで自覚せざるを得ない。あるわけもない変に意味深なことに聞こえてしまった。仲間として、戦力として『大事』と、デュオはきっと言ったのに。いつからこんな、うぬぼれ屋さんになったのだろうか。恥ずかしい。 デュオを見ても人懐っこい、でも、いたずらっ子のような笑顔をうかべているだけだ。そのにっこりが増した気もしたが。 「なんの心配もなかったろ」 「いえ。だから不安が……」 「ぇっ? まさかカトル、オレのこと信用してなかったのかァ?」 「ち、違います。それじゃ、飛び降りるなんてできるはずありません! あの、自分の着地点といおうか、落下点です」 「落下ァ~」 デュオはその表現に、ものすごくウケてしまったようだ。 「だからな、オレ! オレはカトルがどこに来たって受け止めて見せるぜ」 カトルに向かって、片方の口角を上げ器用にウインクをする。デュオのこういう自信に満ちた余裕ある表情は、たまらなく魅力的で。まだ少年のはずの彼を青年、いや、大人の男に見せる。 「デュ、デュオ」 「んん~ん?」 デュオに抱きついたままのカトルは、耳まで真っ赤にすると、首を竦めて目線を外し、ギュッと瞳を閉じた。 「デュオ。カッ、カッコイイみたい……で、す」 「《みたい》って言うなよなカトル!」 「ごめんなさーい! そんなつもりじゃありません」 「じゃあ、どんなつもりなんだよ」 「つもりというか、ぼくの言い方が変になってしまったんです」 照れてしまったとは、恥ずかしすぎてなぜか口にできなかった。 「ちゃんと言うと、《みたい》じゃなくて、すっごくカッコ良くって、びっくりしてしまって。デュオ、さらっとカッコいいから」 細い首筋まで濃い桜色に染まったカトルが早口に言った。 その言葉にデュオは目を真ん丸にした。 一言でいうと、 『そりゃ、びっくりだ』 もっと言うと、 『今さらだろ』 しかし、あえて、デュオからすると、この程度のことで、カトルがそんなことを思うとは考えていなかったようだ。いつも素直になにかするたびに、『すごいです!』なんて、目を輝かしてくれる、素直さはもちろんあったが。 その無垢な純粋さが愛らしすぎて、一緒にいるほどにデュオも、ますますたまらなくカトルを可愛い存在、大切な存在に思えてきてしまうのだ。本当に愛しくて。 カトルと居ると、背陰でわだかまる闇の部分が浄化されたように薄まっていく。恨みを持ったことのある神が、与えてくれた癒しの温もりのように。 「デュオ、……動かないでくださいね」 「ぁ、おお。なんだ?」 「デュオ。ありがとうございます」 浅く焼けた健康的なデュオの頬にカトルはほんのりと、自分の唇を触れさせた。 デュオがいつも熱烈にしてくれるものよりも、ずいぶん控えめだが、カトルなりには精一杯のお礼を込めて。それは、初めて想いを込めての『お返し』だった。 華奢な軽い躰をしっかり抱きしめたなりで、カトルの悲鳴のなか、どかーんと、そのままデュオは後ろへと倒れた。 「ぅ、うわーーーーッ!」 驚きの声を上げ、たじろぐしかないカトル。デュオのようにフランクにキスなんてできない初めてのカトルからのソレは、自分が何かにつけ、こじつけてしている男の度肝を抜いたようだ。 清純派からのキスなんてデュオも初めてだと考えると仕方がないのか。天使の羽で頬を撫でられたような至福感さえ広がる。柔らかで、柔らかで。自分でも持っていたのかと思うほどの純粋な胸の高鳴りを感じた。自分にもこんなにピュアな心があったとは……。 「デュ、デュオーッ!」 ガッツリ抱きしめてくれている下敷になったデュオの腕の中を抜け、すぐに膝をついて心配気に顔を覗き込むカトルに、ぬっと両腕を突き出しカトルを捕まえると引き寄せ、チュッ、チュッと左右の白く柔らかなほっぺに全身全霊を込め、吸いついたのか咬みついたような、はしゃぎまくりながらのキスをデュオはした。超ドアップでもカトルの美貌は圧巻の域だ。でも、とてつもなく可愛い。 「はゃッ! デュ、デュオぉッ?」 「カトル、おまえって、やっぱ、サイコーだな!」 「……?」 カトルはぽか~んと、きょとんとしてしまう。 いつもいつも、軽いキスはあいさつ。さらりとしたキスはお礼。触れるだけのキスは……と、事あるごとに適当なことを言ってしたい放題、友だち付き合いというものの経験のないカトルに軽いキスをしていたのは、デュオだった。『してくれ! してくれっ! カトルからもしてくれッ!』と、騒いでいたのはデュオではなかったろうか。なかなか自然にはできなくて、なんとなく、申し訳ない気持ちも抱くほどだったのに。 なので、カトルからしてのデュオのこの反応は、まったくの意味不明だった。なにか、自分は間違ったというか、ハズしてしまったのだろうか。やはり、慣れない初めてのことなので、なにかデュオを驚かしてしまうような失敗でもしてしまったのかもしれない。 それでも、デュオの『好意はちゃんと言動に出さないと伝わらない』とよく言っている、自分も同意見のそれにならったつもりだったのだが。『最高』に面白かったのだろうか。なにか、はずしてしまったのだろうか。 「変でした? ぼく?」 失敗なのかと、しゅんと長いまつ毛をおろし、項垂れそうになったカトルに。 「ヘンもクソもねーよ! サイコーって言っただろ! 満点越えて120点ッ!」 「!」 ぴくんと、カトルは首を伸ばす。一気に花が咲くような笑顔になった。 デュオはカトルのこういう、素直な反応や小動物のような愛くるしい動きも大好物だ。いろいろなモノを刺激されてしまう。純粋な部分から邪まな処まで。こんな性格でこんなに華奢な躰で、ガンダムに乗っているなんて思えない。口で聞いただけだったとしたらカトルがガンダムのパイロットだなんてこと、信じなかったろう。もっと上手い嘘をつけときっと思ったはずだ。 カトルは湧き上がる感謝を思い切って表してみたのだが、満面の笑顔のデュオに華奢な躰は芝生に引きずり倒されて、五十回くらいは唇口以外だが、顔中だけとは言わずキスされまくる結果になった。 「わ、ぁ、わわ!」 手入れの行きとどいていない芝生であったら、二人とも泥と草まみれになっていただろう。それでも、デュオの三つ編みにくっついた葉っぱを見て、カトルがくすりと笑う。しかし、いつの間にかもみくちゃにされて、上下逆転して組み敷かれていたカトルの、ふんわりしたくせっ毛のまばゆいプラチナゴールドの髪に絡んだ葉は、それどころではなかった。