ショート×ショート「Autotomy」
- AutotomyDigital400 JPY
- 無料試し読みDigital0 JPY

この本に興味をもってくださり、ありがとうございます。 【本作は】 ↓ 「心」と「身体」、そして「人間性の境界」を描いた、全八話のショート×ショート集です。 生きるために、人は自らの一部を切り離す。 罪を背負った右手、真実を見据える眼、過剰に響く声―― 登場人物たちは皆、折り合いのつかない現実と内なる狂気に晒されながら、己の肉体の一部を“捨てる”選択をする。 「自切(autotomy)」――それは、生存のための本能的行動。 彼らが削ぎ落とすのは、ただの肉片ではなく、記憶、過去、感情、そして人間である矜持そのものかもしれない。 すべてを読み終えたとき、あなたの中に残るのは、恐怖でしょうか、それとも微かな共感でしょうか。 あなたの切り捨てたいモノはなんですか...? ーーーーーーーーーーーーーーーーー 筆者の伝えたいこと ▷ 極限状況における“正常”と“異常”の曖昧な境目 ▶ 縛りの中、“人間であること”の矛盾 を、静かな狂気と淡々とした筆致の中で描きました。 ーーーーーーーーーーーーーーーーー ①人の深層心理に触れる、不気味なホラーを読みたい ②身体表現を通して心の歪みを描いた作品が好き ③読後にじわりと残る違和感や余韻を楽しみたい そんな方は読まなければ損します! 各話が独立しながらも、共通する“自切”というテーマが、読者の心をじわりと侵食していきます。 静かな部屋のなかで、ぜひ『Autotomy』の囁きに、耳を澄ませてみてください。 ▽ これからもたくさんの読みやすい小説をお届けします! 新作の通知のため、ぜひ BOOTHのフォローをして 応援よろしくお願いします! また、割引キャンペーンやプレゼント企画の告知などもしますので、 SNSのフォローもよろしくお願いします! Ⅹ(旧Twitter):@say6novel 著者:セーイ6
【無料で試し読み!】
更にもう一話ぶん! noteかPDFで試し読み出来ます! note↓ https://note.com/say6novel/n/nbc794ba44028 ------------------------------ 『殺めた手』 祝杯のグラスが、カランと軽やかな音を立てた。 安物のシャンパンでも、今夜ばかりは上等に感じる。 ガラス越しに揺れる泡が、まるで罪を洗い流してくれているようだった。 男は一人、部屋のソファに沈み込んで笑った。 たった今、肩の荷がやっと下りた。 「よく逃げ切ったもんだ…」 ぽつり、部屋へと響いた声。十四年前のあの夜。口論の末、男は人を殺した。衝動的に包丁を突き立てた。死体は人気のない河川敷に埋めた。死体も発見されぬまま、事件は迷宮入りとなったようだ。 それからというもの、男は注意深く生きてきた。 引っ越しを繰り返し、名前を変え、過去を消してきた。 罪の意識は、もちろんあった。 眠れぬ夜も幾度となくあった。 それでも、今日、この日を迎えた。 刑事訴追の時効が成立したのだ。 「もう誰も、俺を捕まえることはできない」 満ち足りた気分で、男はグラスを傾ける。 泡が喉を滑り落ちる感覚に思わず目を閉じ、笑った。 これまでの苦労が、報われた気がした。 だが 次の瞬間、異変に気づいた。 指先が、じんわりと湿っている。 何気なく、グラスを握る手を見て、男は凍りついた。 右手が、赤黒く染まっていた。 まるで、誰かの血で覆われているかのように。手首から指の先、爪の間、手のシワまで、べっとりと。 「…は?」 驚き、慌てて左手で右手を擦る。血は拭いきれず、左手にも赤が移る。慌ててテーブルの布巾を掴み手を拭う。が、布巾でも拭いきれぬようだ。 血が止めどなく、滴り始める。 「なんだ…?どこか切ったか…?」 しかし痛みはなく、傷もどこにもない。右手は無傷だ。 それなのに、赤黒いその血が、湧き出すように右手を濡らし続けている。 男はグラスを落とした。液体が床に飛び散る。 手を置いた机に、赤い手形がくっきりとついたことに気づき、戦慄したのだ。 「…ちくしょう、なんだよ、これ…」 思い当たる節は一つしかなかった。あの夜、自分が突き立てた包丁を握っていたのは、正しくこの右手だった。 この手が、あの感触を覚えている。 皮膚を裂き、骨に届いたあの硬さとぬめり。 死体を運び、土を掘った、この手が。 「時効が成立しても…罪は、消えないのか?」 男はまさかと思った。あの日の罪の意識が自分にこれを見せているのかと、考えが浮かぶ。 「バカな、そんなオカルト…」 男はシャワーを浴びた。石けんを使って何度も擦った。爪ブラシで指の隙間まで洗い流した。どこにも傷などないはずなのに、水に混じって赤い筋がしきりに、排水口へと流れてゆく。 ふと、鏡に映った自分の顔が、酷く怯えていた。 これが夢であったらどれほどいいか。 翌朝、男はまだ濡れた右手を眺めていた。 夜が明けても、手は赤いままだ。 触れるものすべてに赤い痕が残る。 冷蔵庫の取っ手、トイレのドアノブ、スマホの画面、箸、コップ、シーツ…何にでも…。 それらは次第に、まるで「被害者」のような顔をして、男を見つめ返してくる気がした。 お前のせいだと。 忘れられると思ったのかと。 男は精神科へ行こうとして、すぐにそれもやめた。 医者にこの話をしたらどうなるか。 通報されるか、ヤバい患者として薬漬けにされるか。 頭を抱える。 そうしているうちに一日、また一日と過ぎていく。 いつしか部屋の中は赤い手形で埋め尽くされていた。 どこを触っても、血まみれの後が残る。 もう、食事もまともに取れなくなっていた。 男は耐えきれなくなり、ある夜。 包帯とゴムチューブを机に並べた。 隣には、ノコギリ。 涙が止まらなかった。もはや恐怖はない。そうしなければ、この赤から逃れられないと思った。 「もう…終わらせたいんだ…」 右手をテーブルの上に置き、左手でノコギリを握る。 刃を当てた瞬間、血が噴き出す。 その血は赤く、本物だ。 傷から噴き出す本当の自身の赤い血だった。 男は必死に切った。 骨を断つ瞬間、激しい揺れと音が響く。 叫び声が、部屋にこだまする。 右手が床に落ちた。 動かなくなったそれは、どこか清潔で、罪のないものに見えた。 赤は…消えていた。 というよりも、正しく染まっていた。 左手で周囲を触ってみる。机も、椅子も、ドアノブも。血の痕はどこにもつかない。 男は崩れるようにその場に倒れ、気を失った。 安堵の表情を浮かべていた。 いま、部屋の片隅で、かつて切断された右手が白布に包まれ横たえられている。 男はその手を、まるで昔の恋人を見るような目でじっと見つめていた。 「俺を…許してくれるか?」 ------------------------------ ここまで読んでいただきありがとうございます。 他にも多数の試し読みをご用意しております! 少しでも気に入った作品あれば、続きのご購入をご検討くださると幸いです! 今後とも応援よろしくお願いいたします。 https://note.com/say6novel/n/ne2726146a0e1
【注意事項】
商品についてご質問・ご指摘ありましたらお気軽にお問い合わせください。 小説→Ⅹ(旧Twitter):@say6novel シナリオ→Ⅹ(旧Twitter):@say6_trpg 上記含むその他:seisei666666@gmail.com よくあるお問い合わせ ・朗読への使用許可 ・広告媒体への作品紹介の許可 など 上記連絡先へ、お気軽にお問い合わせください。 また商品の使用に関しては自己責任でお取り扱いください。 商品の横流しはお辞めください。欲しいという方がご友人等におりましたら、このショップをお教えした上でご購入を促して頂けますと幸いです。 --------------------------------------------------------------------- 【小説について】 “朗読”や“作品紹介”へご自由にお使いいただけます! その際 ・作品の購入をされていない方の使用。 ・BOOTHやX(旧Twitter)に公開されていない範囲の画像公開。 は禁止とさせていただきます。 以下、 ・朗読やラジオとして、文字を音声へ変換する使用(BGMや別の画像との併用は可) ・作品の紹介、まとめ、などの有料内容が無料公開されない二次利用 が可能です! (その他、作品について使用許可をご希望の方は、お気軽にお問い合わせください!) --------------------------------------------------------------------- 当配布物・販売物につきましては、真心込めて製作しておりますので、転売・騙りなどの自らの創作物として取り扱う行為はお辞め下さい。 本ショップにおける作品の著作権はセーイ6にあり、その作品の著作権どれもを放棄いたしません。 許可のないAI学習はおやめください。 当方の意に介さない使用を発見した場合、法的措置に則り対処いたします。また、そのような方を見つけた場合、お手数ですがセーイ6までご報告願います。