ますく堂なまけもの叢書⑰ 読書サロン発、百合コレクション2024 ~野溝七生子『山梔』と百合ドラマ元年〜
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大きな反響をいただいた『平成の終わりに百合を読む─百合SFは吉屋信子の夢を見るか?』から早五年、弊誌「百合特集」も四冊目となりました。しかも今回は、第一弾以来のメイン記事二本立て豪華版!です。 特集の一本目、参加者のおひとりであるティーヌさん主宰の「読書サロン」で行われた野溝七生子『山梔』読書会レポート……正直、初読時はこの小説が「百合」であるとの認識はありませんでした。明治・大正の女性たちの苦悩─人権なき時代の女性心理に迫った「歴史的著作」という印象で、むしろ、数多の伝説を持つ女性作家・野溝七生子の代表作を読むことで「山梔伝説」に触れたいというミーハーな喜びのために消費してしまっていたような気がいたします。それから二十年経った今、この小説を再読し真っ先に思い浮かんだのは二〇二三年に創刊された百合総合文芸誌『零合』のことでした。主人公の阿字子が運命の魔女たる調に出会うシーンの鮮やかさ、先鋭さ。現代の百合ファンの皆様にも是非手に取っていただきたいと思い、巻頭に置きました。 もうひとつの特集記事は「百合ドラマ元年を語る会」です。本邦テレビドラマ史における「百合」は弊誌発行人が近年傾注しているテーマなのですが、二〇二四年は明確に「百合」を押し出したドラマが多数放送されることとなり、まさに「百合ドラマ元年」と呼ぶにふさわしい情況が生じておりました。かねてより「BLドラマばかりではなく百合ドラマ特集を!」と弊誌に圧力をかけて下さっていた(笑)近藤銀河さんがはりきってくれたおかげで、大変に実りの多い議論ができたものと思います。 もっとも、今回の特集は、多くの百合ファンにとっての「スタンダード」からは遠い存在であるようにも感じています。ただ、だからこそ、目を向けて欲しい。国内外で「女性」を巡る課題が浮き彫りになる中、この二つのテーマが「百合」というカテゴリーで語られることの意義は決して小さくありません。すべてのひとにとって「無関係ではない物語」としての「百合」を語った一冊になったと自負しております。ご精読いただければ幸いです。 A5/108頁