第五部　令和の祭政（現代） 論説　「学習塾」という制度疲労――テスト至上から学問本位へ 序 子どもの学びが「大学受験」と「定期テスト」のためだけに矮小化され、家計は高額な塾費用を負担する——いまの教育環境は、学ぶ喜びよりも得点の配点を重んじる仕組みへと傾いている。こうした現状を、本稿は悪しき弊害と断じる。極論ではなく、学習塾を原則禁止し、公教育の内実を立て直すことこそ、学問本位への近道ではないか。 １． 学習塾が生む四つの弊害 ① 目的の転倒（テスト至上主義） 　「よく生きるために学ぶ」ではなく、「点を取るために覚える」へ。知識は応用されず、思考は設問形式に馴致される。 ② 家計負担と格差の固定化 　月謝・講習費・交通費が積み上がり、可処分所得が塾費に吸われる。支出の多寡が学歴を左右する構図は、教育の公正を損なう。 ③ 学校教育の空洞化 　「本当の勉強は塾で」という空気が学校を弱らせ、授業の信頼・教師の専門性が目減りする。 ④ 学びの動機の劣化 　内発的関心よりも、外発的な順位・偏差値が優位に。学問への愛着が育ちにくい。