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サイズ:A5 形 体:コピー 頁 数:24頁(表紙込) 発行日:2021.12.31 大阪から江戸へ戻る船内にて山崎さんを看取る二人。京時代の話もちらりあります。
空知らぬ雨
夕暮れの海を行く船の甲板に打ち付ける雨の音は随分と小さくなった。戦場の様な喧しさはとうになく、今は時折強まるものの、ただ静かに甲板を濡らし続けるのみだ。灰白に塗りこめられた漆喰壁のようだった雨脚も、今はまばらでけぶるように薄まっている。 恐らくは夜半には雨も上がり、月も見えるのではないか。そんな話を乗員から仕入れて、土方さんを探している。そもそも自分に聞いてくるように申しつけて、何処に行ってしまったのだか。 船内は怪我人と病人、その予備軍で溢れかえっている。意気消沈し、項垂れたまま座り込んでいる者も数えきれないくらいだ。身体に傷はなくとも、心に重傷を負っている。 (以下本誌にて)
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