はじめての大衍暦
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密教を広めた真言八祖のひとり、一行禅師(いちぎょうぜんじ:683-727)がまとめあげ、「唐代以降の暦法の模範」となった大衍暦(たいえんれき:唐729-761年, 和764-857年施行)。 続く「宣明暦(せんみょうれき:唐822-892年, 和862-1684年施⾏)」ほどメジャーではなく、「『九執暦』から剽窃した不完全な術である*1」と告発され不当な扱いを受けている「大衍暦」についてわかりやすく説明し、暦日を決定する段階までの計算方法についての解説を添えた入門書。(2022年6月16日初版発行)
唐代最先端の「科学的」暦法
第Ⅰ章では、加地哲定(かじ てつじょう)「大衍暦考」(1956)や藪内清『増補改訂 中国の天文暦法』(平凡社・1990)などを中心に、古典の記述と最新の観測結果とを両立させた「科学的」手法について具体的に説明しました。
『大衍暦経』の序盤をわかりやすく解説
第Ⅱ章では、全部で7章からなる『大衍暦経』のうち暦日(れきじつ:実際のカレンダーの日付)を決定する「四、歩月離術(ほげつりじゅつ:月の中心差による補正)」までの計算方法について、張培瑜ら『中国古代暦法』(中国科学技術出版社・2008)を参考に現代天文学や球面天文学による検証も交えて詳しく解説しました。
「大衍暦」研究の歴史と最前線へ
第Ⅲ章では、基礎資料・内田正男『日本暦日原典』(1975, 第四版1992)における「定朔(ていさく:新月の日時)の略算」や、最新の研究・細井浩志『唐・日本における進朔に関する研究』(2010〜12年度科学研究費補助⾦成果報告書・2013)における「史料を反映した暦日の復元」などについてご紹介しました。 また、[内田1992], [細井2013]の内容を反映した暦日・定朔一覧を、購入特典としてお付けいたします。
色覚多様性にも配慮した配色
「五行(ごぎょう)」の5色をはじめ、陰陽道や天文暦法の研究には「色」が欠かせません。しかし、(勉強してみたいけど、色が見分けにくいからなぁ)と諦めてしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか? そこでこの本では、P(1型2色覚)・D(2型2色覚)・T(3型2色覚)の方にもできるだけ配色の違いが認識しやすく、それでいて実際の「五行」などをイメージさせやすい配色になるよう務めました。 (サンプル画像7枚目*2 参照) *1 『新唐書』巻二十七上、志第十七上、暦三上 参照 *2 色のシミュレータ by Kazunori Asada https://play.google.com/store/apps/details?id=asada0.android.cvsimulator を用いて作成。
目録
はじめての大衍暦.pdf 本文(108頁) はじめに 目次 Ⅰ. 大衍暦って何? 易者はピタゴラスの夢を見るか? 大衍数――偶然世界のゆりかご たったひとつの冴えた暦法 1. 二十四節気の整理 2. 「卦気説」の整理 3.「滅日」の独立 4-1. 正弦関数(sin)表の採用 4-2. 三次補間の一次近似式 5. 正接(tan)表の先駆け 6. 「二次補間式」の発展 7. 歳差の正確な理解 8. 月の視差における緯度の影響 9. 五惑星の中心差の考慮 10.「前率」と「後率」 Ⅱ. 大衍暦を作ってみよう 計算の前に 一、歩中朔術――常気・経朔・閏月・没滅の算出 二、発斂術――七十二候・六十卦・土用入り時刻の算出 三、歩日躔術――太陽の中心差による補正 四、歩月離術――月の中心差による補正 Ⅲ. もっと手軽に大衍暦 『日本暦日原典』式〔A〕の使い方 幻の論文アンソロジー『天官書』 史料で迫る大衍暦の復元 おわりに 参考文献・WEB サイト(順不同) 付録︓『日本暦日原典』式〔A〕を用いた大衍暦における定朔一覧.pdf 凡例(1頁) 定朔一覧(45頁)