猫の主人は変わり者
- 猫の主人は変わり者Digital200 JPY
- 無料試し読み2話ぶんDigital0 JPY

この本に興味をもってくださりありがとうございます! 【本作は】 ↓ “猫の生涯”をテーマにした短編集です 猫は9つの魂を持つと言われているのをご存知ですか? それが本当であれば、猫はきっと私たちヒトとは違う一生を歩んでいます。 そんなことを想像し、またそれぞれヒトの一生にも焦点を当てた短編小説となっています。 ーーーーーーーーーーーーーーーーー 筆者の自信作! ▷人間の日常を覗く"猫”からの視点 ▶猫の不思議な魅力だけでなく、ヒトにも不思議な点が? 読み進めると奇妙な物語がいくつも出てきます。 猫に不思議な力があるということは、ヒトにもあっておかしくありませんよね? そんな日常と非日常の合間を楽しめるように書き上げました。 ーーーーーーーーーーーーーーーーー ①猫が好き!猫がかわいい! ②日常の中、ひと息つきたい ③自分探しの真っ最中 といった方に、強くおすすめいたします! 一話完結で、寝る前に一つずつ読み進めるのもヨシ! 一気に気持ちよく読み進めるのもヨシ! 猫の視点を楽しみながらお読みください^^ ▽ これからもたくさんの読みやすい短編集を本にしてお届けします! 新作の通知のため、ぜひ BOOTHのフォローをして 応援よろしくお願いします! また、割引キャンペーンやプレゼント企画の告知などもしますので、 SNSのフォローもよろしくお願いします! Ⅹ(旧Twitter):@say6novel 著者:セーイ6
【無料で試し読み!】
更にもう一話ぶん! noteかPDFで試し読み出来ます! note↓ https://note.com/say6novel/n/n95644802cd66 ------------------------------ 『時間を操る老人』 猫には九つの魂が宿ると言われている。 ヒトは猫のしなやかな身のこなし、危険を顧(かえり)みぬふてぶてしさ、ふらっと身を隠す気まぐれ、執着のない風まかせ、なところがやけに気になるらしく、それらを見て長生きだとか生涯を繰り返しているのだと、夢想する。 儂(わし)に言わせれば、当たり前のことで、よくもまぁ他者にそこまで興味をもって生きていられるものだ。猫は九つの魂を持つ。それの何が不思議なものか。 儂は猫、魂は九つ目。これで一生を終えるところだ。せっかくだから、そんな儂の生涯を語ってやろう。儂は飼われるのを好んだ猫。どの生涯にも主人が居た。みな変わり者だ。 そうだにゃ、まずは一人目の主人の話から… 一人目の主人は、老いたヒトだった。 赤子の頃に拾われ、儂も生きることに必死であった。始めはただ、飯にありつけることが嬉しくて、自分は幸運だと思った。 家じゅうを歩き回り、ここが儂の根城となるのかと満足していた。 主人は変わっていた。何が変わっていたかと言えば、“時間を操る”ことができた。ヒトにそのような力が備わっているのを見たのは、後にも先にもそれが最後だった。 儂が初めてその瞬間を見たのは、儂が例によって家の探検をしていたときだった。 その日はベランダへ続く窓が開いていて、珍しい外の世界を覗くチャンスだと思った。 赤子の儂は主人の目を盗み、ベランダの柵へよじ登ってやった。 部屋は二階に位置し、見下ろす外の街は部屋の景色とは大きく異なった。壁がなく、どこまでも続く世界を初めて目にしたときの感動は、凄まじいものだったと記憶している。 圧倒された儂は、思わず身を乗り出した。すると、そうにゃ、儂は足を滑らせ、落下していった。 驚いて大きく「ふにゃあ」と声が出た儂は、落ちる間際、部屋の中の主人と目が合った。 しかし、決して間に合わぬ距離、主人も驚いた表情をしておった。みるみるうちに地面が近づく、今の儂なら身を翻(ひるがえ)し華麗(かれい)に着地してやったが、生まれてすぐの儂にはその身のこなしは不可能だった。大地に身を叩きつける瞬間がよぎったとき、儂は優しく、温かい腕に受け止められていた。それはなんと、先ほど部屋で目の合った、主人の腕だった。 儂は目を丸くして、何が起こったか理解に努めた。さすがに世の物理法則は肌で感じていたし、二階から老人が急速に家を飛び出し、儂が落ちるのを抱きとめられるとは思えなかった。 しかし、命にかかわる大事故から救われたのもまた事実。儂はただ「にゃあ」とかわいらしく鳴き、己の無事を伝えることしかできずじまいだった。 それ以来、儂は主人が力を使うのを見たことがない。 老人は、自分のために時間を操ることをしなかった。儂はそう思っていた。 ただ、いま思えばあの部屋での一生はとても短かったのだ。 朝が来て、のびをすれば日が落ちる。夜、あくびを一つすれば朝が来る。 そんな生活で、あっという間に儂は年老いていった。 老人は儂が赤子の頃から老いていて、いつ最期を迎えるか、儂もそう思っていた。 しかし、どちらが先に死ぬか分からぬほど、儂はすぐに老いた猫になった。 部屋を飛び出すこともせず、家の中で生涯を満喫するばかりだったが、儂は満足だった。 一つ気がかりと言えばもちろん、主人の寿命だけだ。 ある日、儂が自身の死期を近いと悟った日。 主人は、老いて自由に動くこともなくなった儂を撫でながら、涙を流していた。 主人もまた、儂が死ぬと悟っているようで、間際、儂にこう語りかけてきたのだ。 「すまん、すまんなぁ、ワシのせいじゃ…」 儂は何を言っているのか分からなかった。 主人は儂の死を待たずしてついに耄碌(もうろく)したかとさえ。 「ワシは、どうしてもお前を置いて死にとうなかったんじゃ。かわいいお前を見送って死ぬ、ワシの人生最後の我儘だったんじゃ…」 主人はどうやら、儂の時間を早めていたらしい。それも、自分が先に死に、儂を残すことを恐れて。 「すまん、ワシのせいで短い一生を送らせて、本当にすまん…」 そう言って涙を流す老いぼれ、主人の情けない姿など、儂は見たくなかった。 まったく、儂にとって主人より先に生を全(まっと)うすることなど、当たり前のことで苦しくもない。むしろ食いっぱぐれのない一生を送り、ありがたいくらいだ。 猫の気も知らないで、人間というは勝手な生き物だと、このとき儂は学んだ。 だから、この老いた主人を正してやろうと、傲慢な思い込みを拭い去ってやらねば気が済まんと思い、儂は力を振り絞り、渾身の説教を喰らわしてやった。 「にゃー」 それが儂の最初の生涯、最後の想い出にゃ。 ------------------------------ ここまで読んでいただきありがとうございます。 他にも多数の試し読みをご用意しております! 少しでも気に入った作品あれば、続きのご購入をご検討くださると幸いです! 今後とも応援よろしくお願いいたします。
【注意事項】
商品についてご質問・ご指摘ありましたらお気軽にお問い合わせください。 小説→Ⅹ(旧Twitter):@say6novel シナリオ→Ⅹ(旧Twitter):@say6_trpg 上記含むその他:seisei666666@gmail.com よくあるお問い合わせ ・朗読への使用許可 ・広告媒体への作品紹介の許可 など 上記連絡先へ、お気軽にお問い合わせください。 また商品の使用に関しては自己責任でお取り扱いください。 商品の横流しはお辞めください。欲しいという方がご友人等におりましたら、このショップをお教えした上でご購入を促して頂けますと幸いです。 --------------------------------------------------------------------- 【小説について】 “朗読”や“作品紹介”へご自由にお使いいただけます! その際 ・作品の購入をされていない方の使用。 ・BOOTHやX(旧Twitter)に公開されていない範囲の画像公開。 は禁止とさせていただきます。 以下、 ・朗読やラジオとして、文字を音声へ変換する使用(BGMや別の画像との併用は可) ・作品の紹介、まとめ、などの有料内容が無料公開されない二次利用 が可能です! (その他、作品について使用許可をご希望の方は、お気軽にお問い合わせください!) --------------------------------------------------------------------- 当配布物・販売物につきましては、真心込めて製作しておりますので、転売・騙りなどの自らの創作物として取り扱う行為はお辞め下さい。 本ショップにおける作品の著作権はセーイ6にあり、その作品の著作権どれもを放棄いたしません。 許可のないAI学習はおやめください。 当方の意に介さない使用を発見した場合、法的措置に則り対処いたします。また、そのような方を見つけた場合、お手数ですがセーイ6までご報告願います。