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サイズ:A5 形 体:コピー 頁 数:24頁(表紙込) 発行日:2024.08.11 郡山への転戦中、七夕の夜から函館に至るまでの一幕。ゲストに大鳥さん。 無関係な人を巻き込みたくないから、一騎討ちで決着がつけばよいのにと思ったりしたかもしれない、話。 あ、土方さんの面倒見の良さが三割増しです。何故か。
星今宵
夜になり、風が強まってくる。昼からずっと鳴っていた笹の葉の音も、今はざわりざわりと強く鳴り響いていた。 「もうすぐ七夕だったな、そういえば」 火を落とした提灯を手に、黒い着物姿の男が庭から声をかけてくる。縁側で膝を立て、茶を飲んでいた土方がじろりと視線を投げた。 「ちゃんとおもてから入ってこい」 行儀が悪ぃぞ、はじめ。そう渋い顔をする土方に肩を竦めると、斎藤は近づいてきて、そのまま隣に腰を下ろした。 「あんたの恰好だってなかなか行儀が悪いと思うが」 くっと笑って、それでも粗野に見えない所がずるいというか、性質が悪いというか。 そんなことを呟いて首を振っている。 「どうせ誰も見ちゃいねぇよ。庭から入ってくるような無作法者はおめぇくれぇだからな」 茶しかねぇが、飲むか?そう言って土瓶を持ち上げてみせる土方に斎藤が頷いて見せると、口をつけていた湯呑を干して雫を払い、差し出してくるから、有難く受け取る。 とぽりと音を立てて、冷えた茶が注がれ、斎藤は一息にそれを飲み干した。 「おめぇ、飯は?」 あとは手酌でやれと土瓶を押しやり、立ち上がった土方が縁側から庭に降りる。庭の片隅に掘られた井戸から水を汲み、傍らに伏せてあった手桶に注ぐ音が涼し気に響く。
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